ローマ芸術祭に参加して -ローマ・ラ・サピェンツァ大学訪問―
畑田美智子
平成の遣欧使作家としてローマ・ラ・サピェンツァ大学を訪問することになる。かつて、支倉常長が率いた慶長の遣欧使節団がローマを訪れ、日伊の交流が始まって400周年目に当たる3月13日、時代は「慶長」から「平成」となり、日伊の歴史に新たな1頁が記せられました。日本全国から選ばれた20人の平成の遣欧使節作家によって、日本人のアーティストの和の心が一つになり日伊の歴史に残るように、それぞれの作品をアートタイルにし、それで大きなアートタイルの壁画をつくり、記念として大学に贈呈することとなり、700余年の歴史を持ち伝統を誇るローマ・ラ・サピェンツァ大学の講堂で大勢の学生達に見守られながら披露されました。彼らは大学内に半年も前から貼られた「平成の遣欧使節作家ローマ芸術祭」の告知ポスターを見て、アートタイル壁画のお披露目の日を心待ちに、楽しみにしていたとのことです。 当初、記念式典への学生の参加は講堂のスペースの関係上100名の予定が、当日には3時間前から大行列が出来ていたのです。
ある学生は「僕は日本の歴史、芸術、文化を学びたくてローマ大学に入学しました。日本で活躍されているアーティストの作品がアートタイルになったことを告知ポスターで知り、誰よりも早く目にしたいと朝から並んでいます」と満面の笑顔で語っていました。記念式典が始まる頃には、講堂から学生が溢れ、申入れが殺到したため、急遽300名収容の大講堂が開放され、それでも席が足りず立ち見の学生もいたほどです。特に、式典の挨拶の中で「朝が来て昼になり夜を迎える、このような一見当たり前にも思える貴重な一日をアートタイル壁画はローマの歴史とともにずっと歩んで行くことでしょう」という印象的なスピーチを聞いて、参加した者として大変感慨深いものがありました。こうして「平成の遣欧使節作家、ローマ芸術祭」は無事に幕を閉じ、歴史的建造物に彩られたローマの地で永遠に残る和のアートとして記憶されたのです。
さて、次は式典が終わり学生達に対し日本人アーティストの講義とワークショップが行われました。学生たちは待っていましたとばかりにお好みの作家の所に駆けつけ、それぞれの話を聞くことになりました。私の場合は、講義のテーマは『被せガラスの魅力」、実物はガラスの作品なので持参できず用意したパンフレットと写真を駆使して被せガラスの歴史と制作方法、そしてその魅力を強調したのですが、何しろ日本語からイタリア語への翻訳となりますので、時間の関係上どこまで理解されたかどうか、こちらには分かりませんでしたが、後で聞いた話では皆さん大変楽しんでいた様子とのことでした。ベネチァガラスは有名ですが、それとは違った被せガラスなので、初めて見たとあって、興味津々、さすがイタリア第一の大学というだけあって学生達の理解力は抜群、きらきら光る目が将来を担う若者として頼もしく感じられ、短いけれど大変有意義な一時でした。
最後に彼らへのメッセージとして、「ベネチアンガラスとは違った被せガラスの魅力を認識してほしいということと最近は世界中で天災が起こっているが、自然をモチーフにしている作家としては自然を大切に畏敬の念をもって接してほしい」と締め括りました。