白川郷を訪ねて
             畑田家住宅活用保存会幹事  矢野富美子

 小学校5年生頃まで茅葺きの家に住んでいたためか、年々少なくなっていく茅葺きの家に郷愁を覚え、目に入れば写真に収めたくなるこの頃である。そんな折、長女夫婦が私の還暦祝いにどこか行きたいところをと聞いてくれたので、すかさず白川郷と応えた。今年貰った年賀状に白川郷の写真があったので、一層行きたくなったのである。
 道中、雪がしんしんと降っていて、雪景色を眺めながらの旅であったが、荻町を見下ろす荻町城跡展望台についた頃には雪が上がり、空がだんだん明るくなってきた。周り一面雪に覆われた中にたくさんの合掌造りの家が眼下に広がる様は筆舌に尽くしがたい光景であった。近くでは5〜6歳の男の子が誰も足を踏み入れていない雪の中へ飛び込んで、うつぶせになったり、腰まで雪に埋まったりしながら、満足そうに歩く姿が印象的であった。

主な道は雪が除かれていたり、水を出して雪を溶かしてあった。周りを散策していると空が晴れてきて、青空と雪と合掌造りの家の対比が素晴らしく、想像を絶する風景をかもし出していた。後ろを振り向くと、空はどんよりとしていたが、田んぼの水溜りに合掌造りの家がきれいに写っていて、思わずシャッターを切った。三脚にカメラをつけてじっと構えておられる人がいて、一番良さそうな場所で写真を撮ることが出来なかったのが心残りであった。



 
 荻町最大の合掌造りで、江戸時代に建築され、国の重要文化財に指定されている「和田家」を見学した。この家は今も当主の家族が住んでおられ、一部を公開しておられる。囲炉裏の間や座敷、仏間などがあり、昔使われていた漆の食器類や白川郷の四季おりおりの風景写真などが展示されていた。雪の白川郷を見て感動したばかりであったが、いずれの季節もきれいな風景だろうことが窺えた。2、3階には民具や農具類が展示されており、乾燥野菜も吊り下げられている。屋根裏の柱類が縄で何重にも縛られているのが印象に残った。「この縄は何年ぐらい持つのかな」とふと思った。また、雪の多いこの地方では軒先に、藁で編んだ囲いをつけて、屋根雪が落ちても、家の周りを人が通れるようにしてあるのも興味深い生活の工夫であった。



 1995年にユネスコの世界文化遺産に登録された白川郷だが、茅葺屋根の職人がほとんどいなくなった今、どのようにしておられるのかと思っていたら、村人がお互いに助け合い協力して40年〜50年に一度の屋根の葺き替えをして、合掌造りを守り続けておられると聞いて安心した。ここでは、まだお互いに助け合う精神が息づいていて、その心が私達旅人にやすらぎと感動を与えてくれているように思える。天候に恵まれ感動しっぱなしの旅であった。

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