畑田家での木野雅之(バイオリン) ・吉山輝(ピアノ) デュオリサイタルを聞いて 大阪市大今里 松井 喜久子 庭には大きな松の木が歴史を誇り 広く放たれた廊下に陽があふれ 今日は多くの人々が集うよき日 木野雅之+吉山輝のデュオは息の合った絶妙のハーモニー 暗く深い天井に二つの音色は吸い込まれ まろやかに共鳴し合って木霊(こだま)となり 家の隅から隅へ銀のシャワーとなって降りそそぐ 神童といわれながら栄光と挫折を味わった渡辺茂夫 そして夭折の日本を代表するバイオリニスト貴志康一 彼らの作品はこの日のリサイタルにふさわしい選曲 木樽の中で眠り続けたワインの味わい 熟成された音にしばし酔う 漆黒の大黒柱は一層輝きを増し 梁に集う精霊たちは楽しげに舞う デュオの音色と幾百年の家の息づかいとのコラボレーション 今日よみがえる懐かしき日々 |