自然を大切に
放送大学生・正会員 白木和子
数人の放送大学のサークルの人たちとの居酒屋での話です。友人の1人は大阪近郊の山に独力で別荘を建てた人で、毎月2,3回はその山に行っています。春先に魚釣りを楽しみながら、何日間を山で過ごしていたときのこと、近くにタラの芽がたくさん出ていたので、そのうちに採ろうと思っていたら、ある時全部ごっそりと採られていたそうです。山に魚釣りやハイキングに来ている人たちがタラの芽を採っていることは知っていたが、まさか全部採ってしまうとは思ってもみなかったといいます。地元の人ならそんなことは絶対にしません。
山にハイキングで来た時に、そこに自生している草花を土ごとごっそりと持ち帰る人たちがいるとも聞きます。草花はその山で他の生物と一緒に生態系を形成しているのです。それが何世代にもわたって受け継がれているわけです。それを環境の全く違う他の場所に植えたら枯れてしまうかもしれません。運良く育っても、時が経つうちに、その場所の生態系に混乱を引き起こすかも知れません。自分の家の庭の中に植えているのだから大丈夫だとか、植木鉢で育てているのだから周りの環境とは無関係と思う人もあるでしょう。でも、花が咲き、種子を作るまでに様々な生物と関わり合うのです。
上記のようなことは、たとえよく分かっていても、自分一人ぐらいという軽い気持ちでさほどの罪悪感もなくやってしまうこともありますし、その後すぐに忘れ去ってしまうことも多いのです。そのうえ生態系への影響はすぐに眼に見える形で現れることは先ずありません。でも、自然は個人の所有物ではありません。個人の楽しみのために自然が壊されては大変です。自然がバランスを崩すことの恐ろしさも知らねばなりません。今の社会が余りにも自己中心主義的になっていることを、皆でぼやきながら飲んだある晩のひと時でした。